虚構の環:第1部・再処理撤退阻む壁/5 「撤退」唱える共同研究
毎日新聞 2013年02月07日 東京朝刊 電力業界異論で連載中止 使用済み核燃料を再処理し、ウランとプルトニウムを取り出して再利用する核燃サイクルを維持するのか、見直すべきか。03〜04年、研究者の世界でもせめぎ合いがあった。 「どうする日本の原子力」と題した連載が03年8月、業界誌「原子力eye」9月号に載った。書いたのは山地憲治東大教授(現名誉教授)や電力各社の寄付で作る「電力中央研究所」に所属する鈴木達治郎上席研究員ら「原子力未来研究会」のメンバー。記事は「巨額のコスト」を理由に「青森県六ケ所村の再処理工場は経営的に破綻している。核燃サイクル確立という国策の堅持は閉塞(へいそく)感を強め、原子力の未来を危機に陥れる。国策を変えるべきだ」と主張していた。 10月号では「出口なき前進ではなく撤退を」と訴える予定で、既に原稿もできあがっていた。ところが8月15日、山地教授は出版元の編集主幹から「どうにもなりません」と連載中止の連絡を受けた。編集主幹の上司が取材に答えた。「電力業界から『(購読や広告出稿によって)この雑誌に金を出しているのに何だ。この記事はおかしいじゃないか』と批判が出た。頭にきたが仕方がなかった」 同じころ、経済産業省OBの一人はある電力会社の首脳が「あいつら(山地、鈴木両氏)はもう原子力の、電力の世界から全部消す」と話しているのを聞いた。OBは「研究をやめさせるから『消す』のはやめてくれ、と裏で走り回った」と言う。 ◇ しかし、水面下で研究は続いた。山地、鈴木の両氏に、佐藤太英(もとひで)電中研理事長、電力各社の役員が理事に名前を連ねるシンクタンク「日本エネルギー経済研究所」の内藤正久理事長(現顧問)、田中知(さとる)(前日本原子力学会会長)、八田達夫(現学習院大特別客員教授)の両東大教授らが加わり、03年12月に極秘の研究会が発足した。04年1月に合宿をした後に各自研究を進め、同5月には報告書をまとめた。 「核燃サイクルを維持すると、コスト高で電気料金が上がり産業界が反発」「再処理工場を一定期間動かした後にストップすると(六ケ所村など)自治体が反発」「工場を稼働させず直接処分を可能にすると、青森県が使用済み核燃料の受け入れを拒否し、電力が原発から撤退する」など、大別して3パターンの予想をした。どの政策にも一長一短があるという当たり前とも言える分析だった。 ところが報告書の内容を知った東京電力幹部は「『六ケ所をやめる』というパターンが含まれているのはまずい」と公表しないよう求めた。経緯を知る関係者は「電中研もエネ研も電力の金なしでは成り立たない。だからあきらめた」と語る。研究会は解散し、報告書は闇に葬られた。 佐藤、内藤の両理事長と山地教授は取材に対し圧力を否定。田中、八田の両教授は「経緯は知らない」と答えた。現在、原子力委員長代理を務める鈴木氏は「コメントする立場にない」と話した。=つづく(肩書は当時) -----------------------------------------------------------------------
by tikyuu_2006
| 2013-02-07 11:37
| エネルギー、環境
|
記事ランキング
カテゴリ
全体 新しい文明の構想 自然と共存、分散型社会 これからの日本 もったいない学会 私の文、HP 日本のPLAN-B ご存知ですか? エネルギー、環境 資源は質がすべて 石油ピークとは 日本列島に生きる 未分類 画像一覧
検索
以前の記事
2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 03月 2016年 12月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 06月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 06月 2009年 04月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 05月 2006年 04月 その他のジャンル
|
ファン申請 |
||