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IPCCの温暖化危機論を自然科学から考える

2009年のコペンハーゲンCOP(締約国会議:Conference of Parties)15、結果論ですが日本のみが大きく国益を損ずることなく終り、ホッとしています。

関連して、3件の見解です。


1)本来、地球温暖化論はエネルギー問題そのものです。が、IPCCのみ話題とされIPCCコンピュータ・モデルが基とするIIASA(国際応用システム分析研究所)エネルギーモデルの科学合理性は話題にすらないようです。
私は以前より、IIASAエネルギーモデルそのものに問題がある、と繰返していますが、メディアは勿論のこと、大学、エネルギー専門家すら全く無関心、ただひたすらにIPCCからスタートするようです。不思議なことです。

これについては改めて、拙ホームページをご覧下さい。
http://www1.kamakuranet.ne.jp/oilpeak/oil_depletion/aspo_oil_peak.html

2)そして「低エネルギー社会ー日本の科学技術も改革が求められる」もご参照を。

3)次は、アラスカ大学, 国際北極圏研究センターの赤祖父俊一先生による「クライメートゲート事件とコペンハーゲン会議」です。



「クライメートゲート事件とコペンハーゲン会議」
アラスカ大学国際北極圏研究センター 赤祖父俊一

  クライメートゲート事件(Climategate)とは、地球温暖化問題を研究する国際気候変動パネル(IPCC)の総本山のコンピュータハッカー(または内部者)により、指導的研究者等の間で交わされてきたEメールが多く漏れてしまった事件のことである。米国では、この種の事件はニクソン大統領時代のウォーターゲート(事件が起きたホテルの名)事件になぞらえて、ゲートという言葉を使う。温暖化問題ではクライメートゲートまたはウォーマーゲート(Warmergate)という言葉が使われている。

なぜこれが世界的問題になったかというと、そのEメールに、IPCCの地球温暖化問題研究の指導的立場にあった研究者等の、科学者としては許されるべきではない文通が多くあったからである。この指導者等に「懐疑論者」、「否定論者」、「間抜けども」と蔑まれた研究者が多い米国では、今まで圧倒的勢力を持ち、ゴア前副大統領とノーベル平和賞を受賞し、神聖冒さざるベき地球の破滅という神のお告げを伝えてきたIPCCの根底についに穴があいた、または彼らの基礎が崩壊し始めたとして攻勢に転じたためである。さらに、特にIPCCの「もう議論は終わった」などの発言の傲慢さには目に余るものがあったからでもある。「議論は終わった」などということは、少なくとも先端の科学ではあり得ない。

米国ではニューヨークタイムズやワシントンポストなどの大新聞が直ちにクライメートゲートについて報道したが、どれも極めて歯切れの悪いものであった。その理由は、今までIPCCを強力に支持し、炭酸ガス放出による地球温暖化論が予言する大災害についての記事、また北極圏で起きている自然現象を炭酸ガスによる温暖化と誤解してきた手前、それらの報道そのものにも問題があるということになるからであろう。問題は彼らが報じているより、はるかに重大なのである。

しかも、気候学、気候変動についての専門知識が十分でない記者は、漏れた事実の本質的な内容よりEメールの中の言葉に注意を集中し、そのため報道が問題の本質から離れてしまっている。例えば、温暖化のデータの総元締の長が「トリック」という言葉でデータについて他の研究者と文通したが、記者らがこの言葉を「ごまかし」と解釈して問題にした。しかし使った本人はそれは単に「科学的にうまい手を使った」だけと開き直ると、それ以上質問できなかった。実際にはデータそのもの(温度の数字)を温暖化が強調されるように変えたのである。これは漏れたコンピュータのプログラムを見ても明らかである。

にもかかわらず、そのような操作をしても「結果の本質は変わらない(全体的には正しい)」と開き直っている。科学者として、理由を公表せずデータに手を加えることは絶対に許されないことなのであり、科学者の資格は失われてよい。にもかかわらず、IPCCに参加してきた科学者でさえも「結果は変わらない」としている者もある。そのような者は科学者ではあり得ない。問題の本質は、そこにある。実はすでに何人かの研究者がIPCCの発言に疑問を持ち、データを譲ってほしいと依頼のEメールを出していたようであるが、巧みに断ってきたこともEメールで判明した。税金を使っての研究である以上、データは私物ではなく公開されるべきものである。「うまい手」が知られることを恐れたのであろう。科学ではどんなすばらしい実験や解析結果であっても、他の研究者が再現できないものは認められない。この場合、数字を変えた理由とその数字自体を発表しない限り、誰もIPCCの温度のデータを再現できないのである。それは科学ではない。すなわち、IPCCのデータは誰も使えないのである。

さらに、IPCCの指導者の間では温暖化の炭酸ガス論に反対する論文の発表を妨害する共謀も行われていた。論文発表を生命とする科学者でないとこの重大性は記者にはわからないかもしれない。したがって、報道側は自分等の今までIPCCの発表を神のお告げのごとく報道してきた手前もあり、自分等の顔を立てる必要もあり、クライメートゲートは「大山鳴動、鼠一匹」(これに似た表現が英語にもあることを知った)であると結論したのもある。IPCCに参加した科学者の中にも、自分が科学者であることを忘れて、これに同調している者もある。IPCCに参加したことは誤りではなかったと言いたいのである。 客観的なデータなしの学問は学問ではないことが忘れられている。

筆者はコペンハーゲンの会議には出席する資格がなかったので(以前のバリ島の会議では二回も要請があったが、なぜバリ島で行うのか、アラスカの北端で開くなら行ってもよいと断った)会議の様子について述べることはできないが、すでに述べた理由でクライメートゲートは大きな議題として取り上げられなかったのではないか。

出席したオバマ大統領は、炭酸ガス論者に囲まれている。例えばかれの唯一一人の科学顧問がその一人である。彼は1970年代地球気温が低下した折、大氷河期が訪れるという論文を発表している。すなわち、社会活動家であり、筆者の言う「大変屋」である。オバマだけでなく他の各国首脳も同様の立場にあるのであろう。

さらにIPCCは、炭酸ガス論に反対する者を悪玉扱いしているため、政治家はそれを恐れて建前的に立派な発言をしてきた。(日本だけが真面目に本音で述べてきた。)実際、もともと彼らは炭酸ガス論を本当に信じているとは思えない。1992年のブラジルのリオにおける会議以来、この種の会議は何回となく繰り返されてきた。彼らが本当に炭酸ガスによる地球の破滅を信じているなら、経済問題を先おいて合意に達しているはずである。したがってこの種の会議は政治家と官僚の「年一回のお祭り」でしかない。無意味であるが、世界第三次大戦より良いとするより仕方がない。会議での唯一の合意は次の会議の場所と時期の決定であるが、来年は7月メキシコシティーで、とのことである。今度は暑い場所を巧妙に選んでいるのであろう。アラスカの新聞はコペンハーゲン空港にあったポスターの写真を載せているが、それはブラジルの首相が2020年に合意に達せなかったのを詫びているものであった。1992年から30年経っても何も決まらないであろうことを皮肉ったものであろう。

ついでではあるが、コペンハーゲンでの鳩山首相の影は薄かったと日本の報道は伝えているが、筆者が機会あるごとに述べてきたように、炭酸ガス放出量が4%弱である日本が問題になるはずがない。それなのになぜ「25%」をもって国際的リーダーシップを取ろうとしたのか、理解に苦しむ。IPCCが言うように炭酸ガス放出者が「悪玉」ならば、大悪玉の中国と米国が改心することによってはじめて彼らがリーダーシップを取ることができるのである。日本など全く問題にならないのである。

ところが、米国は中国を自分の工場にしてしまっている。しかも中国に膨大な借金がある。すなわち、大悪玉同士には切っても切れない深い関係がある。オバマは中国に何も要求できる立場にはない。したとすれば、すでに了解済みの芝居であろう。さらに、オバマがどんな数字を持ち出しても、連邦議会上院の承認なしには条約に調印できない。上院は京都議定書は審議必要なしとして一蹴している。鳩山首相と科学顧問団はこんな簡単な世界情勢がわからないのか。国際リーダーシップを取りたいことはわかるが、この問題では不可能だったのである。

一方、本格的な総本山からの漏れはコペンハーゲン会議が始まってから起きたようである。IPCCが使ったデータの情報が流れ出したのである。各国は気象データをIPCCに提供してきた生データを持っている。さっそく、ロシア、オーストラリアなどが彼らの生のデータとIPCCの使ったデータを比較したところ、彼らの観測所で温暖化が起きていないものは使われていないことがわかった。これではいよいよIPCCは自身に都合のよいデータを選んでいたことが発覚してしまった。以前、記者等は、IPCCが使わなかったデータの一部があったことはわかっていたが、それについて質問しても「不確かなデータは使えない」と返答されるとどうしようもなかった。そのため「地球温暖化は人間活動のために起きた。ただし活動とはデータをねつ造することであった」などと発言する者さえ出てきている。科学と科学者に対する不信感が生まれてきた良い例であろう。

筆者はすでに2008年3月、米国地球物理学会の新聞に「気候学者とIPCCへの提案」と題してこの種の問題を取り上げ、「気候変動についてはあまりにも誤解が多いので、一般市民が正確な情報を得たとき、科学そのものと科学者に対して避けがたい反動があるのではないかと懸念する」と述べた。

自然変動を詳しく観察すると地球は1800年頃から温暖化している(これについては後で詳述する)。IPCCの行ってきたことは、一般市民にこの温暖化にさえ疑問を持たせ、科学と科学者の信用を台無しにしてしまった。「科学」を利用して全世界を巻き込んだこの問題について「科学史上最大のスキャンダル」と表現する者があるのは仕方がないことである。

自然の気候変動への対応は炭酸ガス放出を削減することではなく、この自然変動に順応することであり、その対策は全く異なる。新聞、ラジオでは毎日のように「気候変動と戦おう」と報道しているが、「地球の回転を止めよう」と言うのと同様に、自然変動は止めることはできないのである。

IPCCは、彼らの炭酸ガス論はコンピュータ・シミュレーションによって証明された(すなわちコンピュータはデータを正確に再現できた)としているが、手が加えられたデータ(本当でないデータ)を再現できたことは、コンピュータによるこの種の研究の弱点を表している。IPCCのコンピュータ・シミュレーションは彼らの理論の証明にはならないのである。

実はIPCCについては、もっと本格的な重大問題がある。それは、IPCCの旗印となってきた「ホッケー・スティック」というあだ名のある図についてである。この図によると、地球は900年前からわずかながら冷えてきたが、1900年代になってから、予想に反して、突然、急速に温暖化が始まったことになっている。この温度の年代変化を示す図がホッケー・スティックの先のように曲がっているので、そのあだ名がついた(図参照)。これは炭酸ガスによる温暖化を示す最も重要な研究結果であるとされてきた。ところがこの図には、気候学初級の教科書でさえ論じられている1000年頃の中世温暖期も、1400〜1800年に起きた小氷河期もない。中世温暖期は現在より気温が高かったという研究もあり、それは現在の気温が過去かつてなかった最高気温であるというIPCCの主張にとって不都合である。また、小氷河期がないのは、小氷河期が1800年代に終わり、その後回復(温暖化)が始まっていることはわかっているので、温暖化が1900年になってから始まったとするためには都合が悪いからである。

この図の作成者は漏れたEメールの最も重要な二人のうちの一人である。この図の作成にあたっての統計的な誤りはすでに指摘されてきた。筆者は誰でも誤りを犯すことはあり得るので、データは正直に解析されたものと思ってきたが、これが怪しくなってきた。Eメールの中でもこれについての言及がある。統計的な誤りは指摘されたが、IPCCはこの図を公式に引込めてはいない。公式に誤りを認めないことも大きな問題である。なぜそんな簡単なことができないのか。その理由は、この図が政治家を含めて一般に広く信用されてしまっているからで、IPCCの信用問題になるからである。筆者は公式発表があるまで、これを問題とする。IPCCは、ホッケー・スティックの図を含めて、レポートを2500人の世界的に著名な気候変動研究者の「全員一致」のものであるとしたが、この「全員一致」も彼らのねつ造であった。世界的に著名な研究者がこれらを知らないはずがない。

これもついでではあるが、このニュースが世界中に出回っているにもかかわらず、日本の報道はこの問題が明らかになってから十日間沈黙を守っていた。日本がアル・ゴアを教祖として国を挙げて地球温暖化を大問題にしてきたにもかかわらず、である。日本の市民の大部分は炭酸ガス論に反論があることさえ知らなかった。これは全く異常である。日本の将来にこんなことがあってよいのであろうか。一方、IPCCを強力に支持してきた英国のBBCは一転してIPCCの激しい批判にまわった。総本山が英国にあることの責任を負ったのであろう。報道としては健全である。NHKはまだ沈黙を続けているとのことである。IPCCを信奉してきた日本の学界も目を覚ましてほしい。IPCCは学会ではない。

最後になるが、気候学とは、もともと新聞記事になるような科学分野ではなかった。それが地球温暖化問題で一躍脚光を浴びることになり、IPCCのために歪んだ科学になってしまった。IPCCの憲章には「政治政策の提案は行わない」とあるにもかかわらず、参加した2500人の学者による分厚いレポートの他に、「政策者のための要約」という短い「全員一致」のレポートまで発行した。2500人の科学者のレポートはあたかもその要約のバックアップのように使われた可能性が高い。政治家や官僚でこの分厚いレポートを読んだ者はほとんどいないはずである。(したがって、この問題は学者の活動であろう程度におさまったかもしれない。)炭酸ガス問題で活動している多くの者もこの要約さえ十分読んでいないであろう。1980年代、冷戦終結後、地球温暖化問題は彼らの理想的な「お祭り」のテーマとなり、世界三大問題にまで祭り上げてしまった。

気候学は、政治、報道から一日も早く離脱して、純学問に戻るべきである。そうしないと気候学と呼べなくなる。IPCCのデータは使えない。IPCCはこれを機会に廃止されるべきである。

IPCCの温暖化危機論を自然科学から考える_b0085879_20275974.jpg


図の説明
 過去の年代による温度変化を示す曲線が2つ示してある。 青線はMoberg他が英国の科学雑誌Natureに2003年に発表したものであり、最も信用度の高い研究である。赤線はホッケー・スティックと呼ばれるIPCCの旗印となったものであり、1900年頃急に温暖化が始まったとしている。赤線には中世温暖期も小氷河期も示されていない。
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by tikyuu_2006 | 2009-12-24 10:28 | これからの日本
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