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21世紀の日本は、すでに「沈黙の春」の世界

21世紀の日本は、すでに「沈黙の春」の世界
   石井吉徳 東大名誉教授 平成28年6月21日

地球は有限である
人類は無限の経済成長はできない。人口はすでに70億を超え、今も増え続ける。 現代工業社会は大量生産の仕組み、作ったモノは、いずれゴミとなる。 そして廃棄物は増えるばかり、環境破壊は進行する。 だが現代人は、指数関数的な成長を当り前と思うようである。
その頂点がアメリカで、彼の国の浪費は世界からの借金で賄われる。日本のお金も大量に。この国は大変な市場主義だが、これがアメリカンスタンダード、グローバリゼーションと称される。

これはマネー原理主義、それは世界に貧富の格差を作りつつある。 富は一部の人々に集まる仕組み、これが権力利権構造だ、今では1%の裕福層に富が集中する仕組み、下位99%、特に若者に負の経済がしわ寄せされる。

これが世界に蔓延する紛争の原因、世界の基本構造が変ったのである。見方を変えれば、地球が有限だからであり、我々は地球の限界に当面しているともいえる。だが楽観論者は科学技術が進歩すれば、市場に任せればと言う。本当にそうだろうか、そうではなかろう。

そこで改めて人類の歴史、文明史を見てみよう。
古代から「森を失った文明」は滅んできた。ところが人類は過去の歴史から学ぶに疎いのである。このようにして、昔から今も人類は森を破壊、環境を汚染してきた。

写真は、世界遺産に指定され、辛うじて生き残ったレバノン杉、数千年の遺影である。深い杉に覆われていたレバノンだが、今はこのような林が所々に残るだけとなった。
3000年の歴史を誇るエジプト文明、そのピラミッドの傍には死んだ王があの世に上る木造の船が今も残っている。エジプトに行けば分かるが、ここは砂漠の国、大きな木は無い、もちろん森はない。そこで古代からレバノン杉が運び込まれた。つまりレバノンは木材の輸出大国だった。その名残がこの写真なのだ。

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レバノン杉(1996年、撮影・川村徒最子さん)

このような自然破壊は世界中で起こった。今では世界の森は半減、自然生態系は徹底的に破壊されたのである。これが文明の発展と崩壊の姿である。

そして石油は減耗する
現代は石油文明である、常温で流体の石油があるから車社会がある。それは現代の大量生産社会の象徴、石油がそれを可能としたのである。つまり石油は「社会の生血」なの。

だが、もう大油田が発見されない、中東は地球の特別の場所なのである、第二の中東はやはり発見されなかった。市場原理も技術の進歩も、地球の限界にも勝てなかた。シェールオイルは結局、あだ花であった。資源としての質が低すぎる、それがようやく分かってきた。いずれ述べるが、メタンハイドレートも無かった、膨大な国費を浪費したが技術の問題でなかった。

このようにして、人類は自然の遺産を浪費して発展を維持してきたが、これからはグローバリゼーションの逆、集中から分散、地産地消の時代がくるのであろう。

昔は、日本にも陸上に油田があった。その例が下図、秋田の八橋油田、それは秋田市の郊外に。
                           
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昭和30年代の八橋油田に、私は新入社員として配属された、帝国石油(現・国際資源帝石)である。その油田の現場作業員として、それこそ泥まみれで働いた。高さ40m以上もある櫓にも上った。

その探掘井で試油をする。 油をタンクに噴出させるのだが、地下から猛烈な圧力で石油が自噴する、それは櫓が揺れるほどだった。大学で地球物理学を学んだ私、背筋が震えるほど感動したものである。

地球のポテンシャル、自然の凄さに驚いたが、資源というのは素晴らしいと思った。以来、私は自然の恵みが人類にとって如何に重要か思い知った。資源は「質」が全てであると自然から教わった。だが、しかしこの八橋油田はもう無い、記念碑のようなポンプがあるだけだ。

その後16年間、石油開発の仕事に従事、インドネシア、中東にも出かけた。今の日本でこのような現場経験を持つ石油技術者は少ない、それが問題なのだ。

日本の歴史を簡単に述べておく。江戸時代には佐渡金鉱山などがあった、それは絵巻にもある。日本は黄金の国、ジパングだった。金以外にも石炭、銅鉛亜鉛山なども方々にあった。日本は資源は乏しくなかった。それが次々と閉山され、今では資源の大輸入国となった。

ここで重要なこと、資源は有限だ使えば無くなる、ということ、それを私は実体験したのである。この資源の減耗、質の低下がは世界中で起きている。

ある時、東大工学部助教授に招聘された。そして地球の資源、エネルギーの研究教育が仕事となった。22年間務め60才で定年退官、今度は環境庁の国立環境研究所の副所長に。資源から環境問題へと変身、地球温暖化・京都会議に参加、環境問題の複雑な国際力学の実態を見た。

そして65才、定年退官。その後、招かれて富山国際大学の教授に。 立山連峰を眺める日々だった。そして日本の環境問題の本質をまなぶ。


「沈黙の春」がそこに
私は60年ほど前、富山市郊外で育っている。そのころ富山の自然は豊か、夏には蛍が、秋にはうるさいほど赤トンボ、田圃にはタニシ、ヒルなどが沢山、小川のくぼみに手を入れるとフナが跳ね、メダカも小川で群れなしていた。
                                   
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富山市郊外の大学にいたる田園風景は写真のように広々、素晴らしかった。遠方に立山連峰、大学キャンパスには時折、日本カモシカが来るほどだった。
 
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                    大学キャンパスに現れた日本カモシカ(2002年、撮影・上坂博亨さん)

このように淡々と語れば、富山は自然豊かと思われよう。だがそれは間違いだった。ある時、私は妙なことに気が付いた。田園地帯が余りにも静か、音がほとんど聞こえず、動くものがない、鳥もいない、蝶が飛ばない、蚊すらほとんどいない。
子供のころ、頭に止まってうるさいほどだった赤トンボもいない。そして空に「トンビが飛ばない」ことに気がづいた。「トンビが飛ばない」ということは、食物連鎖の頂点であるトンビの餌、小動物がいないということ、小動物がいないのは彼らが食べるミミズ、虫などがいないから。

この発見は私にとって衝撃的だった。考えられる理由はただ一つ、田畑に撒かれる農薬、合成化学物質が自然、生態系を徹底的に破壊したからである。

私は富山国際大学で環境政策という講義をしていた。そこで学生たちに聞いてみた、すると親たちがトンビはいなくなった、でも呉羽山にはまだいる、と話したそうである。

呉羽丘陵とは富山平野を南北に区切る地帯である。それを境として佐々成政、西が前田利家の勢力圏があった。その風土は今も残っている。地方とはそのような所、地勢は「藩」と密接に関係しており歴史は今も残る。21世紀に考えるべき重要な視点なのであろうか。

「沈黙の春」(R・カーソン、1962年)が目の前、富山にあった。「春になっても小鳥がさえずらない」、生態学者のレイチェル・カーソンの警告、大量生産された化学物質が自然界にまかれ、生態系を徹底破壊する、と彼女は訴えたのだが、当然反対者は多かった。

だが世界的な論争の末、DDTなどは消えたが彼女自身は若くしてガンで逝った、57才。当時、私は東大工学部に移ったばかり、化学工学の先生方は総じてカーソン非難、理学部出身の自然科学者の私は四面楚歌だった。今もそうだが。

21世紀、人の幸福を考える社会が求められる
農薬、化学物質は石油、天延ガスからつくられ大量散布され土壌を広範囲に汚染する、そして農業機械は石油で動く。これが現代文明の一つ姿だが、その石油資源も無限ではない。

21世紀はエネルギーが文明維持の要だが、3.11まではクリーン・エネルギーとされた原子力は今では疑問視されている。核についてはいずれ詳しく述べるが、私はこれからは「自然と共に生きる」、「集中から分散」がキーワード、「科学技術で自然を改変、制御する時代」から「自然と共存する知恵を育てる時代」と思っている。
「地球が危ない」のではなく、いま 「危ないのは人間」、現代文明は人を本当に幸せにした改めて考えたい。統計によれば「物より心の豊かさを」と願う人が60%に達している。

物余りの中、人間の心はますます貧しくなった。GDPで計る成長経済は持続可能ではないのでは、これからは効率最優先から知恵を、物より価値を重視する文明へ転換すべきではないか。

これから皆さんと考えたい、順次に。以下、私のホームページから、
技術万能の強欲資本主義が社会を劣化させる
日本社会中枢の崩壊が顕著である。強欲資本主義はマイナス金利の禁じ手を使ってもその根底は沈降するのみ、アベノミックスはやはり幻想だった。

古代から、未来問題は3つに分類されてきた、「食料、エネルギー、軍事」である。軍事とは戦争、使われる大量の武器、軍事費など。食料は人類生存の基本だが、マスコミはスポンサーである巨大企業が政治、経済を支配してしまうと、どれほど深刻であっても報道しなくなる。

今の日本では核エネルギー推進の構造、そして原発事故と同様の状況が、食糧、遺伝子組み換え農業で起きている。人類は大きな曲がり角にある。しかも日本は地殻変動列島である、自然とどう共存するかである。
http://oilpeak.exblog.jp/25814844/

以上
石井吉徳 平成28年6月21日
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by tikyuu_2006 | 2016-06-22 04:57 | 新しい文明の構想