中越沖地震と刈羽原発の論議:「真の科学」が欠落している

7月16日、柏崎刈羽原子力発電所を、予想もしなかった大きな直下型地震が襲った。発電所当事者のお話、メディアの報道などは断片的で総合的見解は述べられないが、今の時点で感想だけは述べておきたい。今後の建設的な論議のために。

先ず、よく大事に至らなかったと安堵している。報道で見る限り、原発敷地内の波打つ道路、各所の陥没などは大変なものである。しかし7基の原子炉は、とにもかくにも「停止」出来ている。 自動停止かどうか知りたいが、あれほどの大地震である、先ずは日本の技術を評価し、自らも地震の被災者であった現場の方々に、ご苦労さまと申し上げたい。

これは原発の今後にとって、大きな教訓、反省材料を提供している。進んだ技術を持つという日本での体験、世界にも参考となるはずである。冷静な科学が展開されることを願っている
いま世界中で原発ブームだが、安全の確保、環境保全、そしてウラン資源の有限性などの「当たり前」に改めて注意したい。

以上は一般論だが、地球物理学者としてもう少しコメントする。人は大地に住む、その上にある建造物は自然の影響下にある。一方技術で出来ることは限界がある、人の知恵は絶対でないからである。謙虚に「自然から教わる」のが科学である。
刈羽原発サイトは地質的に比較的若い地層、新第三紀の堆積岩、泥岩層の上にある。そして当然ながら日本列島には活断層はどこにもある、今後鋭意探査すべきである。物理探査技術は今では非常に進歩している
メディアなどで建設当時の地震学のレベルを云々し、互いに責任のなすりあいをしているが、このような論議は止めるべき、何も前に進まない。メディアの冷静さに期待するが、原子力関係者も絶対安全神話をもう終りにして貰いたい。人間のすることに絶対などないからである。

この際である、原子力資料情報室地質学的な見解を以下に引用しておく。投稿日時 2006/12/5、地震前のものである。
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東京電力の柏崎刈羽原発は、活発な構造運動の続く地盤上に計画・建設されました。西山層の泥岩を基盤として建設された半地下式原発です。多くの原発は地表面に設置されていますが、柏崎は基礎地盤の標高がマイナス40mです。基礎を深くして根入効果を期待し、半地下式にしたのです。西山層は計画当初には新第三紀・鮮新世前期の泥岩だとされていましたが、1980年代の火山灰調査の結果、新第三紀から第四紀にかけての堆積層だと“若返り”ました(第四紀は、160万年以降から現在まで。鮮新世は500万年前から180万年前までです)。地震波の伝わる速さ(せん断波速度Vs)は、地盤の固さを示す指標になります。地震動の基準となる解放基盤面はVsが700m/秒以上ですが、西山層はそれを大幅に下まわり、構造物の基礎にできる固さに達するには、地下数百メートルまで掘り下げねばなりません。柏崎刈羽原発6・7号炉では人工地盤を造成して“岩盤”と称しています。旧指針を厳密に適用すれば柏崎刈羽原発は不合格となる劣悪地盤です(以下略)。
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波打った敷地内の地盤、落盤などをみるにつけ、この文は読む価値がある。科学とは冷静に科学的に考えるものである、原点は「自然に聞く」、先入観を持たないで人の話に耳を傾ける、である。中越沖地震はこの「当たり前」を、「全ての立場の人」に教えている

東大理学部地球物理の大先輩、寺田寅彦は言っている、「災害は忘れた頃にやってくる」。高層ビルラッシュの東京、そして日本のあちこち、このような直下型地震に襲われたらどうなるのか。建築基準すらごまかす拝金主義の技術大国日本である、心配なのは、原発だけではない。
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by tikyuu_2006 | 2007-07-22 10:48 | エネルギー、環境
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