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ピークオイル論とイースター島の教訓

(石油技術専門誌「ペトロテック」:巻頭の時評、2005年4月13日、とても分かりやすく良い内容なので、東京大学工学系 六川修一教授のご了解を得てご紹介します)

わが国の最も大きなアキレス腱であるにもかかわらず、最も理解されていないものの1つがエネルギー供給の問題である。
国際的な石油地質学者であるCampbellらが主宰 するASPO(ピークオイル・ガス研究協会)は、米国における石油生産のピーク(ピークオイル)予測を的中させたHubbert 曲線を世界の在来型石油資源に拡張し、2010年以前のピークオイル到達を予想している。
しかしながらこの石油ピーク論は少数派の理論として必ずしも社会に受け入れられてはいない。それは、これが優れた石油文明論、しかも人類には受け入れがたい現代文明論になっているからである。

すなわち、20世紀半ばに始まったばかりの石油文明が、わずか50年余にしてその生産のピークを迎えるということは、残りあと50年、すなわち、わずか1世紀あまりで現代文明の繁栄が消滅することを示唆するからである。

実はこれに類する歴史的事実が既に存在する。モアイ像で知られる南海の孤島イースター島は、豊かな森林資源を使って16世紀当時としては世界的にも優れた文明を築き上げた。しかし、その文明を支えた森林の 急激な伐採によって、17世紀初頭には、とうとう島のすべての森が丸裸になってしまい、その結果、島の生活基盤そのものが崩壊してしまったのである。



部族間での闘争があったとはいえ、彼らは森の資源によって生かされていることは悟っていたに違いない。にもかかわらず、彼らは過度に森に依存して生きるシステム を変えることはできなかったと考えられている。その結果、イースター島の文明崩壊からわずか200余年にして、その子孫にさえ、自分たちの築いた文明が忘れ去られてしまった、すなわち「忘却の文明」と化してしまったのである。

翻って現代社会を考えれば、イースター島の運命が、われわれに暗示していることは極めて重い。今日、人類は地下から取り出した化石エネルギー資源を大量に使って豊かな現代文明を謳歌している。
しかし、この化石エネルギー資源は、まさにイースター島における森林資源そのものである。その大量消費は、イースター島が森林を失うことにより生存基盤そのものを失ったように、われわれが現代文明の基盤を失うことにつながりかねない。

さらに今日の世界が、エネルギー資源に対する問題意識を持ちながらも文明の持続可能なシステムを発見し得ていないという事実は、イースター島崩壊の運命と酷似しており、われわれを震撼させずにはおかない。
エネルギーの消費傾向がこのままで推移すれば、いずれは現代文明が崩壊し、200~300年後には「20~21世紀に栄えた石油文明」そのものが「忘却の文明」にならないとも限らないのである。
遅ればせながらわれわれの生き方を真剣に考える時がきたように思う。
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by tikyuu_2006 | 2006-05-08 16:13 | 新しい文明の構想
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