気候と文明・気候と歴史

1)気候と文明・気候と歴史
鈴木秀夫・山本武夫 (朝倉書店、絶版) 
http://www.ne.jp/asahi/wtnb/2000/recommend/genre1/suzuki-yamamoto.htm
古代の四大文明といわれるものが、いずれも今からおよそ5千年前に大河の流域に花開き、そしておよそ3千500年前に滅んだことは、よく知られています。ところで、なぜ4つなのか。大河といっても、たとえばなぜガンジス川ではなくインダス川なのか、なぜ揚子江ではなく黄河なのか。なぜアマゾン川ではなくナイル川なのか。そして、なぜそろって5千年前に興り、なぜいっせいに滅んだのか。滅亡の方は一応、民族大移動が原因とされていますが、ではなぜ至る所で同時に民族移動が起こったのか。これらの疑問に自信を持って答えられる人はほとんどいないでしょう。確かに中学や高校ではそこまでは教わりませんでした。こんな質問をする生徒は、間違いなく先生に嫌われるでしょうね。

しかし、ここに答えが用意されているのです。地球規模の気候の、千年単位の変動を捉えることによって。おおまかにいうと、今からおよそ1万年前に最後の氷河期が終わると同時に、地球の平均気温は上昇し始め、5千年前まで続く高温期となります。高温期の終わりと同時に、乾燥化が始まり、農業に適した土地が縮小したため、人口の集中化が始まりました。これが、あの4つの大河の流域とその周辺で(そして、そこでのみ)起こったのです。実に気宇壮大な話で圧倒されますが、けっして大風呂敷ではなく、湖底に堆積した花粉の分析など、膨大なデータをもとに、文明成立の自然条件が明らかにされます。そして、問題の3千500年前に何が起こったのか?

本書は「気候と人間シリーズ」全7巻の第4巻で、「気候と文明」「気候と歴史」の2部分に分かれ、2人の著者が分担しています。4大文明の話はその前半の話題の1つですが、後半では日本の歴史において百年単位の気候変動が果たした役割を、統一国家の成立と中世における東日本と西日本の勢力交代などに探っています。

大文明の興亡も、国家の盛衰も、それを担った人間とその社会の偉大さや愚かさを映し出すものであることは確かでしょう。しかし人間は、もしかしたら百年~千年単位の気候変動という、所詮人間にはどうすることもできない、というよりも、その社会の人間には予測することすらかなわない、自然の大きな営み、いや、気まぐれ(年平均気温にしてわずか±1~2度の変化!)に翻弄されているのかもしれません

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2)古代文明と気候大変動―人類の運命を変えた二万年史
Brian Fagan (2004) The Long Summer: How Climate Changed Civilization
ブライアン フェイガン (河出文庫) [文庫]

地球上の全ての生命は、誕生以来約 40 億年の激変する地球劇場のドラマとして展開してきた。主として地軸の傾きや太陽活動の変化といった抗しがたい天文学的要因によって、過去 50 万年の間にもほぼ4回の長い氷期と短い間氷期のサイクルを繰り返し、現在は第 4 間氷期のほぼ末期である。人類はこの氷河と共に現れた。途中ミニ氷河時代を挟んでいるが、過去 1万5000年の間氷期はそれでも最も気候的に安定した時代であった。とはいえ詳しく見ると実は干ばつと大洪水の繰り返しの歴史でもあった。

 著者は冒頭で、バグダッドの南で繁栄した古代都市ウルの干ばつによる突然の崩壊と現代まで続くミシシッピ川の洪水との闘いを述べて、問題の所在を示している。そして過去二万年の第4間氷期の気候大変動がメソポタミア、エジプト、マヤ・インカなどの古代文明に与えた影響をそれぞれの残された間接的気候記録に基づいて評価し、現代都市文明の脆弱性に警告を発している。

 ミシシッピ川は自らの意思にしたがって1,000年に一度くらいの割合で川筋を変えてきたが、半定住の狩猟採集民にとっては洪水は恵みにこそなれ避難は殆ど問題にならなかった。湿原が干拓されて農地に変り、三角州に都市が建設されてから洪水が大問題となった。万里の長城に匹敵する両岸の堤防治水工事といえども、100 年ごとに訪れる洪水に対してはともかく、1,000 年に一度の規模の大洪水に対しては無事を祈るばかりと著者は予言している。現にその脆弱性の一端を最近のハリケーン被害で露呈した。

 いずれの古代都市のケースでも、もともと移動性の狩猟採集民が地域の温暖湿潤化によって農業生産を始めて定着し、都市文明を発展させ人口の増大をひきおこす。やがて必ず襲う寒冷化によって生産能力が低下し、過剰に増大した人口を支えきれず、都市が滅亡するとの例外の無い筋書きである。例えば 9~13世紀の5世紀間ヨーロッパは安定した温暖な気候に恵まれたが、南北アメリカ大陸は深刻な干ばつに見舞われ、筋書き通り北部では戦争が起こり、南部ではマヤとインカの大文明が崩壊した。しかし南カリフォルニアのチュマシュ族だけはこの大干ばつの時代を生き抜いた。その智慧は生産性を高める競争ではなく、相互依存を促進することであって、大陸内部の狩猟採集民と海岸の漁民との交易による富の分配と住み分けであったとのことである。

 この生き残り戦略は動物の天敵から逃れる戦略に通ずるものがある。草食性のカメムシとその天敵の捕食性カメムシとの関係では、捕食者が増大したときに被食者は繁殖率を上昇させて個体群を守るのでなく、むしろ低下させて捕食者の餌を減じて生き残ろうとする。地球劇場の激変するドラマの進行は何人も止めることは出来ないが、二酸化炭素排出規制など、それによる災害を少なくさせることは可能である。中でも最大の課題は地球規模の人口問題である。歴史上の古代都市文明の崩壊は、いずれも人口増大によって繰り返された人災であるというのが本書の結論である。本書では過去二万年にわたる中国を始めとする東アジア文明については一切言及されていないのが物足りないが、おそらくこの結論は変らないであろう。本書は右肩上がりの文明至上主義の人間に大自然の摂理に沿った生物としての生き方を考えさせる機会を与えてくれる良書である。 (山岸 秀夫 編集委員)

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3)関連してご覧を 
●「地球は本当に温暖化しているのか、その科学的データ、考察など」
http://oilpeak.exblog.jp/18328015

●「行き過ぎる「温暖化脅威論」:IPCCを絶対視してはならない、自然は永遠の謎だから」
http://oilpeak.exblog.jp/8177019
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by tikyuu_2006 | 2015-04-25 16:04 | 新しい文明の構想
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